大っきい子の絵本

木を植えた男 沁みるお話と絵

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木を植えた男

ジャン・ジオノ 作
フレデリック・パック 絵
寺岡 襄 訳

はなしは一九一三年のむかしにさかのぼる。

わたしは、南フランスのプロヴァンス地方をよぎるアルプスの、旅人が足を踏み入れぬような古い山なみの道を、若い足にまかせてつき進んでいた。

まえの晩から水筒の水はなくなっていたので、まずは水のありかを探さなければならなかった。

ふと見わたすと、はるかかなたにちらっと小さな黒い影。

それは、羊飼いの男だった。
かたわらには三十頭ばかりの羊たちが、焼けるような地面に寝そべっていた。

まったく不毛なこの地にあって、かれはまさに秘められた泉のような存在だった。

その夜、わたしが泊まることを、男はよくわきまえていた。

羊飼いは、どこからか小さな袋を持ってくると、なかに入ったどんぐりをテーブルのうえにひろげた。
そして、一つ一つを手にとって、かなりていねいに調べたすえに、良いものと悪いものとによりわけはじめた。

男は、羊たちを放牧地へつれだすまえに、百粒のどんぐりの袋をバケツの水にちょっと浸して、腰にゆわえた。

わたしは、ゆっくりと散歩するふりをしながら、羊飼いと平行に道をたどっていった。

羊のえさ場は、とある小さな谷あいにあった。
男はそこに羊を放すと、犬に番をさせた。

そこからさらに二〇〇メートルほど、男は山道を登っていった。

やがて、めざしたところに着くと、男はさっきの鉄棒を地面につきたてはじめた。
そうしてできた穴のなかに、こんどは用意したどんぐりを一つ一つ埋めこんでは、ていねいに土をかぶせた。

かれは、カシワの木を植えていたのだった。

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