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任務!『ヤクーバとライオン』感動の絵本

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ヤクーバとライオン➊勇気

テシエリー・デデゥー作
柳田邦男訳

ライオンの目は、語りかけてくる。

「見てのとおり、わしはきずついている。
夜どおし手ごわい敵とたたかって、
力もつきはてた。
おまえがわしをしとめるのは、
たやすいことだろう。」

わしを殺せば、
りっぱな男になったと言われるだろう。
それは、ほんとうのめいよなのか。
それはおまえが考えることだ。」

ヤクーバは、くるりとむきをかえ、帰っていった。

ヤクーバのすがたが見えると、
村はつめたくしずまりかえった。

ヤクーバとライオン➋信頼

テシエリー・デデゥー作
柳田邦男訳

牛の世話をしていた男は、ふりむくと顔色がかわった。
男もライオンに気がついたのだ。
あのときから村をおそわなくなった、あのライオンだ。

ライオンは、じりじりとちかづいてくる。

男は、おそれることもなく、
ライオンの前にたちはだかった。
そして、「かえれ」と手であいずをした。

ライオンは、なかまたちが見つめるなかで、
ひきかえずことはできなかった。

ついに、たたかいがはじまった。

男の首や腹や太をひっかき、
男をたおしたかに見えた。
だがそのたびに、あしのつめは
ひっこめられていた。

男のやりは、何回もライオンのわきをついたが、
けっしてぐさりとつきさすことはなかった。
ふたりとも、自分が勝とうとは思っていなかった。

やがて力つかいはたしたふたりは、うごけなくなり、
夜のしずけさのなかで、へたりこんでいた。

ふたりは、ともに相手をふかくふかく尊敬する心で
むすばれていた。

柳田邦男
戦争にしろ民族紛争にしろ、いじめに対する仕返しにしろ、双方に理由や言い分があるだろう。
しかし、それでは際限のない暴力と殺し合いの連鎖となってしまう。
その惨劇と悲劇のくりかえしを絶つにはどうすればよいのか。
それはまさに現代に生きる人間の課題だ。

ここで「任務と任務のぶつかりあい」という言葉を絵本のなかで使っているが、とくに「任務」という用語は、子どもの読者にわかるだろうかと疑問を抱く人もいるだろう。
私もさんざん悩んだ。
だが、「任務」という用語を安易にほかに言葉に置きかえたのでは、この緊迫した重要なフレーズを表現することはできなかった。
子どもはたとえ社会性の強い「任務」という用語を十分に理解できなくても、くりかえし耳に響かせることで何か大事なことを語っているということはわかるだろう。
将来のためには、平易にくだくより、その語感を残したほうがよいと私は考え、あえてほかの言葉にしなかった。

村から去ったキブウェはどうなるのか。
餓えのなかで死を覚悟して去ったのか。
その物語は、読者ひとりひとりが心のなかでじっくり考えてほしい。
物語は一つではないだろう。

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