安寿と厨子王
絵・堀泰明
文・森忠明

「船頭は どちらも わしの甥っ子。大人はあちら、子どもはことらの舟に召され。
軽いほうが速く進むでな」
商いをすました大夫は直江の浦にもどっていった。
二艘の舟が北を南へ別れたとき、母はだまされたことに気づいた。
「売るのら四人いっしょに売ってくださいませっ」。
船頭に すがりついた母はけとばされ、うわたきはなぐりとばされた。
遠ざかる きょうだいを扇で まねきつつ母は叫んだ。
「安寿は地蔵菩薩を、厨子王は由緒書を、けっして はなしてはなりません」。
・・・・・
「よし。おまえの名は しのぶ。
浜で毎日潮を汲め。
弟の名はわすれ草。山で三束の柴を刈れ」
・・・・・
「おまえは山を越えて ひとりで お逃げなさい。
浜は見張りが多いけれど山なら逃げられる」。
やぶのなかで耳をそばだてていたのは三郎だった。
