御殿場線(ごてんばせん)ものがたり
文 宮脇俊三
絵 黒岩保美
東海道に鉄道を建設することになりました。
日本でいちばん重要な鉄道です。
けれども、「天下の嶮(けん)」とうたわれた箱根山が立ちはだかています。
関係者たちが、あつまってそうだんしました。
「海岸ぞいに鉄道をしいてはどうだろうか」
「ダメだ。熱海の先で五マイル(やく八キロメートル)ものトンネルをほらなければならない。とてもむりだ」
それで、箱根山の北側を通るルートにきまりました。
御殿場まわりです。
これなら、ながいトンネルをほらなくてすみます。
そのかわり、急は坂をのぼらなければなりません。
こうして、箱根山の北がわをまわる線路がしかれました。
もちろん「御殿場線」ではなくて「東海道本線」です。
明治22年(1889)のことでした。
