水の話
文 近藤等則
絵 黒田征太郎
最初の いのちから
人間まで
すべての いのちは
海から 生まれたのです
人間の 赤ちゃんは
おかあさんの
お腹のなかにいたとき
羊水という
水の中に 浮かんでいます
羊水は
海水とおなじ成分で できています
赤ちゃんは おかあさんの
海のなかで 育つのです
いのちは みんな
ひとつに
つながっているのです

花のこども
原案・絵 黒田征太郎
文・英文 小原稚子
だれも見ていないところでも
花は咲いています。
だれも見ていないところでは
ひとは生きていけません。
花にはかないませんね。

ぼく みたんだ
えとぶん・くろだせいたろう
ぼく みたんだ おひさまの なかにいたんだ

未来へノスタルジア
ジュゴンの海へ
絵と文 黒田征太郎
ジュゴンの住む海の上に でっかい鉄のハコを
浮かべて海上へリポートをつくることを
アメリカと日本とで考えているらしい。
ぼくは その海を見にいった。
ちっちゃな舟に乗って海に出た。
潮風が、波のしぶきが ぼくを洗ってくれた。
沖からみた辺野古の村は海に守られて静かだった。
海と陸とヒトとジュゴンとが
混じりあってここに生きているのだと、うれしくなった。
六月二十三日
沖縄慰霊の日
守りたかった命が
守れなかった悲しみを思う日

旅のネコと神社のクスノキ
池澤夏樹
黒田征太郎
あれはなに?
あの大きな建物
りくぐんひふくししょ!
なに?
ヘータイさんの服を作るの
服をつくったり、返ってきた服を洗って、
穴があったら繕って、また使えるようにする
なんで穴があるの?
鉄砲の弾が通ったから
だって誰かが着ていたんでしょ
その人は死んだ
だから脱がせて、血を洗って、
穴をかがって、次の人に着せて送り出す。
次の人も 次の人も 次の人も 次の人も
人も生えてくるの、
草や木みたいに?

火の話
作 黒田征太郎
火の神の使い ヒノコは
寒さと餓えに ふるえるニンゲンが
かわいそうに 思え
ニンゲンに 火を あげたいと
考えました。
三日三晩考えた 火の神は、
ニンゲンの「智恵」を 信じて
願いを 聞きいれることにしたのです。
だだ、
「火を与えるについては
ひとつ 約束がある。
火を使って 殺し合いを してはならぬ」
と 火の神は つげました。

じべた
ぶん たにかわ しゅんたろう
え くろだ せいたろう
きかいは おおきな あなをほります
きかいは たかいビルを たてます
じべたは かくれてしまいました
でも じべたは ちゃんとあるのです
じべたは いつまでも じべたです

土の話
文 小泉武夫
絵 黒田征太郎
こごには また草や木が繁(しげ)ってよ、
花も咲いで鳥の囀(さえずり)も帰ってくっぺで。
「ん だんだ。
こりねで まだ放射能(ほうしゃのう)なんて
いじりまわしたらよ、
今度こそ何もかも終わりだもんない。
それにしてもよ、
目に見えね おっかね放射能をよ、
目に見えね生きものたぢが
やっつげて消してしまんだがらよ、
まあ人間どもの やってることなんざあ、
ちっち、ちっち」って言って返すべ。

シチューはさめたけど
きむらゆういち/さく
黒田征太郎/え
あるひ くまが ほんを よんでいると、
「ほんなんか よんでないで はやく ゆうごはんを つくってよね。」
うさぎに そう いわれて、くまは ムカッとしました。
くまは うさぎのすることが みんな きにいらなく おもえてきました。
こいつが いなかったら どんなに いいだろう。
こうちゃを のみながら ゆっくりと ほんを よみ、
しずかな じかんを すごせるんだ・・・。
あくるひ、うさぎは
「いやなら でていってやるよ。」
うさぎは あっさりと いえを
でていってしまったのです。
くまは ゆっくりと シチューを にこみながら ほんを ひらきました。
ふと まどを みると ぽつぽつと あめが ふりだしてきました。
「あ、あいつ かさを もっていかなかったっけ。」

昭和二十年八さいの日記
文 佐木隆三
絵 黒田征太郎
七月七日
家のまえのみぞに大ナマズ。
たらいの なかで
しずかに およいでいる。
八月六日
「広島へ新型爆弾、らっかさんが空ではれつ」
ピカッと光り、大きなキノコ雲が立ち上がって、
夕方からヤケドをした人たちで学校はまんいん。
朝から広島へ ぎょうしょうに出た のりこおば、
夜なかまで みんなで まったが
とうとう もどって こなかった。
のりこおばが いなくなったら こまる。
八月十一日
のりこおばが、
五日ぶりに生きてかえった。
「黒い雨」で べっぴんさんは大バケ。
みんなが よってたかって聞いても、
口をきくことなし。
九月四日
たらいの大ナマズが いなくなった。
「のりこおばに せいをつけさせる」と
おじが もって いったそうな。
のりこおばが
べっぴんさんに もどってくれるなら・・・。
