あかい ろうそく
新美南吉 作
いもとようこ 絵
さるは、あかい ろうそくを
さるが、
「あぶない あぶない。
そんなに ちかよっては いけない。
ばくはつするから」
と いいました。
ぱあっと ひろがる はなびを
めに うかべて、
みんなは うっとりしました。
ししは ほんとうに ひを つけて しまいました。
・・・・・
いもとようこさんの絵がかわいいですね
ごんぎつね
新美南吉 作
黒井健 絵
山の中に、一人ぼっちのいたずら子狐「ごん狐」という狐が森の中に穴をほって住んでいました。
川の中に人がいて、何かやっています。
「兵十だな。」とごんは思いました。
兵十は、びくの中へ、そのうなぎやきすを、ごみといっしょにぶちこみました。
兵十がいなくなると、
兵十が向こうから、
「うわァ、ぬすと狐め。」と、どなりたてました。
ごんは、にげていきました。
十日ほどたって、兵十の家で葬式
いつもは赤いさつま芋みたいな元気のいい顔が、きょうは何だかしおれていました。
「ははん、死んだのは兵十のおっ母だ。」
その晩、ごんは、穴の中で考えました。
「兵十のおっ母は、床についていて、うなぎが食べたいと言ったにちがいない。
ちょッ、あんないたずらをしなけりゃよかった。」
兵十は今まで、おっ母と二人きりで貧しいくらしをしていたもので、おっ母が死んでしまっては、もう一人ぼっちでした。
・・・・・
ごんは、ぬすんだいわしを兵十の家の中へ投げこみました。
つぎの日には、山で栗をどっさりひろって、それをかかえて、兵十の家へ・・・
つぎの日も、そのつぎの日もごんは、栗をひろっては、兵十の家へもって来てやりました。
そのつぎの日には、栗ばかりでなく、まつたけも二、三ぼんもっていきました。
そのあくる日もごんは、栗をもって、兵十の家へ出かけました。
そのとき兵十は、ふと顔をあげました。
と、狐が家の中にはいったではありませんか。
こないだうなぎをぬすみやがったあのごん狐めが、またいたずらをしに来たな。
「ようし。」
小学校の教科書に載っていて、絵を描いたことを覚えています。
いつまでも心に残る作品です。
でんでんむしのかなしみ
新美南吉 作
かみやしん 絵
でんでんむしは おともだちに はなしました。
「わたしは なんと いう ふしあわせな ものでしょう。
わたしの せなかのからの なかには かなしみが いっぱい つまって いるのです」
すると おともだちの でんでんむしは いいました。
「あなたばかりでは ありません。あたしの せなかにも かなしみは いっぱいです」
べつの おともだち
また、べつの おともだち
また、また、べつの おともだち に・・・
・・・おなじ ことを いうので ありました。
「かなしみは だれでも もって いるのだ。わたしばかりでは ないのだ。
わたしは わたしの かなしみを こらえて いかなきゃ ならない」
でんでんむしは もう、なげくのを やめたので あります。
子どものすきな神さま
新美南吉 作
西條由紀夫 絵
子どものすきな神さまがありました。
雪がどっさりふった つぎの朝、十三人子どもたちは遊んでいました。
「雪の上に顔をうつそうよ。」
そこで十三人の子どもたちは、腰をかがめて
一列にならんで雪の上にうつったのでした。
「一、二、三、四・・・・・」
どうしたことでしょう。
十四ありました。
きっと、いつものみえない神さまが、子どもたちのそばにきているのです。
いたずらずきの子どもたちは
神さまをつかまえようよ、と そうだんしました。
「兵隊ごっこしょう。」
いちばんつよい子が大将になり、あとの十二人が兵隊
「一ッ。」「二ッ。」「三ッ。」「四ッ。」「五ッ。」「六ッ。」
「七ッ。」「八ッ。」「九ッ。」「十ッ。」「十一ッ。」「十二ッ。」
「十三ッ。」
「それ、そこだッ。神さまをつかまえろッ。」
神さまはめんくらいました。
ひとりのせいたかのっぽの子どものまたの下をくぐって、
神さまは森へにげかえりました。
けれど、あまり あわてたので靴を・・・
手ぶくろを買いに
新美南吉 作
黒井 健 絵
「どたどた、ざーっ。」と物凄い音がして、パン粉のような粉雪が、ふわーっと子狐におぶさって来ました。
間もなく洞穴へ帰って来た子狐は、
「お母ちゃん、お手々が冷たい、お手々がちんちんする。」
母さん狐は、その手に、はーっと息をふっかけて、ぬくとい母さんの手でやんわり包んでやりながら、
かあいい坊やの手に霜焼ができてはかわいそうだから、
夜になったら、町まで行って、坊やのお手々にあうような毛絲の手袋を買ってやろうと思いました。
行手にぽっつりあかりが一つ見え始めました。
「坊やお手々を片方お出し。」と母さん狐が言いました。
その手を、母さん狐はしばらく握っている間に、可愛いい人間の子供の手にしてしまいました。
坊やの狐はその手を広げたり握ったり、抓って見たり、嗅いで見たりしました。
「それは人間の手よ。いいかい坊や、町へ行ったらね、たくさん人間の家があるからね、まず表に円いシャッポの看板のかかっている家を探すんだよ。
それが見つかったらね、トントンと戸を叩いて、今晩はって言うんだよ。
そうするとね、中から人間が、すこうし戸をあけるからね、その戸の隙間から、
こっちの手、ほらこの人間の手をさし入れてね、この手にちょうどいい手袋頂戴って言うんだよ、
わかったね、決して、こっちのお手々を出しちゃ駄目よ。」と母さん狐は言いきかせました。
「どうして?」と坊やの狐はききかえしました。
「人間はね、相手が狐だと解ると、手袋を売ってくれないんだよ、
それどころか、掴まえて檻の中へ入れちゃうんだよ、人間ってほんとうに恐いものなんだよ。」
「ふーん。」
「決して、こっちの手を出しちゃいけないよ、こっちの方、ほら人間の手の方をさしだすんだよ。」と言って、母さんの狐は、持って来た二つの白銅貨を、人間の手の方へ握らせてやりました。
お母さまが出しちゃいけないと言ってよく聞かせた方の手をすきまからさしこんでしまいました。
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現代の言葉でないのが、日本の情緒とエキゾチックな情景を引き立てているように感じます。