かさじぞう
瀬田貞二 再話
赤羽末吉 画
むかし、あるところに、
びんぼうな じいさんと
ばあさんと あったと。
おおみそか じいさんは、
「ばあさん、ばあさん。
きょうは、おれ、かさを
五つも こしらえたから、
まちへ いって、
しょうがつ おもち かってくる。
ことしこさ、いいとしをとるべな」
にぎやかな としこしいちでは、
じいさんの かさなんか、
みむきもされなかったと。
じいさんは しかたなく、
かさを せおって、もどってきた。
とちゅうの ひろい のはらに
いしの じぞうさまたちが、
たっているばかり。
みれば ふぶきに さらされて、
かおから つららを たらして ならんでいた。

きつねにょうぼう
長谷川摂子 再話
片山 健 絵
むかし あるところに、
びんぼうな ひとりもんの男が あった。
山の田んぼから かえってくると、
うしろから ついてくるものが ある。
「おらは たびのもんだが、もう くらくなったすけ、
こんやは おまえさんのいえに とめてもらおうと おもうて
ついてきた」
女は ちいさなこえで
「おらを おまえの かかにしてくれや」
と いった。
ふたりは ふうふに なった。
そのうち ふたりのあいだに 男の子が うまれて、
ててっこうじ と 名をつけた。
つばきの 花ざかり。
それが あんまり みごとだったから、
かかは つい うっとりと
うちながめておった。
そこへ ててっこうじが とことこっと かけてきて、
いきなり こえを あげた。
「かかの しっぺたから でっこい しっぽが
ぶらさがっとる」
・・・・・

ねずみのよめいり
おざわとしお 再話
かないだえつこ 絵
むかし、
ある大きなふるい家に、
ねずみのふうふが
すんでいました。
やがて 子どもが生まれました。
子ねずみは、きれいな きだてのいい
むすめ ねずみに なりました。
「そろそろ あの子にも、よめいりさきを
さがして やらなくちゃ なりませんね」
「ねずみより もっと
えらいもんに やりたいもんだ」
と 父さんねずみが いいました。
「そりゃあ、お日さまが
いちばん えらいと おもいますよ」
「お日さま、お日さま。
あなたが いちばん えらいと
おもうので、しつれいですが、
むすめをもらって くれませんか」
「うーん、せかいで いちばんといえば、
わしより えらい ものがいるぞ」
・・・・・
