キミちゃんとかっぱのはなし
作・神沢利子 絵・田畑精一
ヨコハマの みなとに はいる 船の にもつを あげおろしして、しごとの すんだ ハシケは、夕ぐれ、運河に つながれます。
とうちゃんは、どうの間(ハシケの 人が ねおきする へや)で、ごろりと よこに なり、かあちゃんは、水を くみに でかけ、キミちゃんだけが、おもちゃの 子イヌの ムクを だいて あそんでいました。
ムクを だいた キミちゃんが、はしごを のぼったとたん、モッコが ゆれて、トウモロコシの ふくろが、どすんと、おっこちました。
ハシケが ぐらりと ゆれました。
あぶないっ。
キミちゃんが ころんだひょうしに、ムクが 海の うえに ぽーんと おっこちました。
「ムク、ムク。」
波に うかんだ ムクを、だれかの 手が、ぐっと 海の なかに ひっぱりこみました。
「かっぱ。」
キミちゃんが さけびました。
いってらっしゃーい いってきまーす
神沢利子さく 林明子え
「おーい、なおちゃん、おかえり」
「やっ、おとうさんだ。おかえりなさい」
「まあ、おかえりなさい」
「ちょうど、あっちゃった。よかったね。
おとうさん、きょうの ごはん、あててごらん。なお、しってるんだ」
「おいしい ものかい?」
「そう。あててごらん」
「ふんふん、なんだろ? ライスカレーかな?」
「あたり! すごいね。おとうさん」